「工事請負約款」からは毎年1題出題されています。契約にかかる内容なので複雑に感じてしまうかもしれません。また、過去問を中心に学習していると、文字を目で追っていくだけでなかなか頭に入っていかず、応用的な問題に対応できないことも…。過去問では工事監理者の業務に関する内容がよく出題されています。こちらで工事監理者の立場を中心に理解すれば、契約の主旨がちょっとスッキリするかと思います。
工事監理者って現場で見かける検査をしている人ですよね。
そうですね。その工事監理者ですが、その他にも業務があり工事請負約款によく出てきます。
工事請負約款はいろんな人が出てきてややこしいんですよね。ちょっと自信ないな…。
工事監理者の立場を理解することで、それぞれの立場がわかるようになり解答しやすくなると思います!
工事監理者とは…
まずは工事監理者の定義について。
「工事監理」とは、発注者、設計者の施工監理のことであり、「監理」とは、監督・管理することです。それを司るのが「監理者」ということになるのですが、工事請負約款における「監理者」とは、「この工事に関し、発注者との間で監理業務の委託契約を締結したものをいう。」となっております。
つまりは、
「工事監理者」
建築主より委託され、責任をもって工事を設計図書と照合し、その通りに実施されているかを確認する者。
ということになります。
もっとくだけていうと、お客様(発注者)のかわりに、注文した建物が問題なく工事されているか確認する、立場にあるということですね。
相関図で示すと下図のようになります。
建築主の代わりに、建築主が請負契約を結んだ工事施工者の施工している現場へ監督員を派遣し、確認するという構図がわかるかな、と思います。
監理者の職務(委託内容)
つづいて、監理者の職務についてですが、まとめると以下のようになります。
- 工事が設計図書等に合致しているかどうかの確認
- 説明図、詳細図を受注者へ交付
- 施工計画(工期)の助言、施工図、材料、設備などの検討、承認
- 施工についての指摘、立会い
- 出来高払い、完成払いの請求書の審査
- 引渡し時の立会い
これらの職務により、受注者から発注者側へ提出されるものについては、職務の範囲内で工事監理者が間に入って精査するということになります。
そして、問題の生じた場合は発注者に報告することになります。
異議申立て
発注者が、工事の施工または管理について、適当でないと認められるものがあるときは、受注者に対して、その理由を明示した書面をもって、必要な措置を取ることを求めることができます。
これは発注者の当然の権利といったところだと思いますが、受注者も異議申立てができます。
受注者は、監理者の処置が適当でないと認められるときは、その理由を明示した書面を持って、発注者に対して異議を申し立てることができます。
つまり、監理者は一方的な強制力を持っているわけではないということです。これは過去にも出題されていますので押さえておきましょう。
工事用図書どおりに実施されていない場合は…
工事用図書通りに施工されていない場合は、以下のような処置となります。対応を強制する内容となっており出題頻度も高いため合わせて押さえておきましょう。
第17条
(1)施工について、工事用図書の通りに実施されていない部分があると認められるときは、監理者の指示によって、受注者は、その費用を負担して速やかにこれを補修または改造する。
このために受注者は、工期の延長を求めることができない。
(2)発注者又は監理者は工事用図書のとおりに実施されていない疑いのある施工について、必要と認められる相当の理由があるときは、その理由を受注者に通知のうえ、必要な範囲を破壊してその部分を検査することができる。
過去問
以上の内容を踏まえたうえで、過去問を見てみましょう。
【令和3年−1】
一般的な設計図書に基づく施工計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1 .監理者は、工事施工者から提出を受けた「品質計画、施工の具体的な計画並びに一工程の施工
の確認内容及びその確認を行う段階を定めた施工計画書」のうち、品質計画に係る部分につい
て、承認した。
2 .監理者は、一工程の施工の着手前に、総合施工計画書に基づいて工事施工者が作成する工種別
施工計画書のうち、工事の品質に影響を及ぼさない工種を省略することについて、承認した。
3 .設計図書に選ぶべき専門工事業者の候補が記載されていなかったので、設計図書に示された工
事の内容・品質を達成し得ると考えられる専門工事業者を、事前に工事施工者と協議したうえ
で、監理者の責任において選定した。
4 .近隣の安全に対して行う仮設計画で、契約書や設計図書に特別の定めがないものについては、
工事施工者の責任において決定した。
過去問ー解説
この年の工事請負約款からの出題は、4枝中1〜3の選択肢が、工事監理者に関する枝となっていました。1、2の枝とも監理者の職務で触れた施工計画の承認に係る内容でした。
1.正しい。施工計画の品質計画に係る部分は、監理者の承認を受けます。
2.正しい。施工計画のうち必要性の少ないものは、監理者の承認を受けて省略することができます。
3.誤った枝です。専門工事業者の選定は、品質に影響を及ぼすと考えられる部分については、監理者と協議し、施工者の責任で選定します。
4.正しい。仮設は、受注者(工事施工者)の責任において決定します。
これだけでは解答できない出題もあるかと思いますが、監理者の立場、職務我はっきりすることで、他との関係が見えてくるかなと思います。以上になります。少しでもお役に立てればうれしいです。
コメント