令和6年の設計製図試験において、冒頭の「Ⅰ.設計条件」で「基礎免震構造を採用した、大学の建築学科棟を計画する」とありました。事前の課題発表の留意事項において大地震等に備える構造である旨の記載がありましたが対応できましたでしょうか。ただ、基礎免震構造の理解だけでなく、ヘリアキと周辺環境を適切に計画する必要がありました。免震構造のポイントの整理と出題までの背景も含めて整理していきましょう。
資格学校の対策問題に出てきたので、免震構造は描けたよ!
課題の発表時の留意事項にも大地震に備えるよう記載がありましたからね。
ヘリアキもきっちり描きましたよ。
ヘリアキに駐車場がまたいだ計画になりませんでしたか?
えっ…。どうだっけ。
免震構造の場合の注意点を一緒に整理していきましょう。
出題までの背景
課題発表時の留意事項より
令和6年の設計製図試験において、基礎免震構造が求められるということは課題発表時の内容を見ればある程度想定ができました。
【建築物の計画に当たっての留意事項】より
・大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画とする。
この一文が記載されていました。資格学校でも今回は免震構造について対応する練習問題を出して対策していたようです。
過去の出題
基礎免震構造を要求する問題は過去にも出題されています。「平成27年」の「市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅」です。
基礎免震構造
免震装置の種類について
免震装置とは、地面からの地震動エネルギーを吸収し、上部構造の揺れを大幅に低減するもの「絶縁」、「支持」、「減衰」、「復元」の4つの機能を備えるものをいいます。
上記の機能を満たす装置として、大きくわけると「アイソレータ」と「ダンパー」の2つの装置がああります。
一級建築士の設計製図試験の対策としては、特に指定がなければ「アイソレータ」で良いでしょう。
「アイソレータ」とは
基本イメージはこんな感じです。ゴムの塊ではなく、ゴムを積層しています。
ゴムを積層することにより、水平方向は柔らかく動き、鉛直方向の重量に対して安定して支えられる構造となります。
断面図
次に断面図を見ていきましょう。
断面図からヘリアキ部のエキスパンジョイントのGL以下部分がどうなっているかよく分かると思います。図はせり上がりスライド形式を採用した場合。
ヘリアキ部のエキスパンジョイントがせり上がって飛び出しているのがわかりますでしょうか。変形した場合にせり上がってくる部分には設備等は設置できませんね。それを次の平面計画で見ていきましょう。
平面計画
平面図上でヘリアキ部を表現する場合は上図のようになります。
地震等で上部構造が動く場合は、破線部までエキスパンションジョイントがせり上がってくるということになります。可動部に設備や物が置かれないように低木の植栽等を計画するのは有効な手段になります。
駐車場はどこに計画すればよかったのか。
令和6年の問題では駐車場の計画に頭を悩ませる部分があったと思います。
エキスパンションジョイントの上に計画することは、もちろんできませんが、エキスパンションジョイントの可動範囲についても計画は避けるべきでしょう。
上図のようになります。断面図ではヘリアキ部を2,000で描きましたが、某資格学校の解答例ではそこまでの余裕がありませんでしたので1,500で計画し、可動部含めて2,000としていました。また駐車場はハンディキャップ用の駐車場なので最低でも3,500は必要になります。
今回は以上になります。いかがでしたでしょうか。設計製図試験は去年に続けて難化してきていると言われています。作図できるだけではなく、きちんとした計画が立てられることが求められているように思います。少しでも学習のお役に立てればと思います。
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