令和5年一級建築士設計製図試験において、防火設備であしきりにかかった方もいたのではないでしょうか。異種用途による防火設備の設置や延焼ライン上の屋内駐車場の防火設備の設置など大丈夫だったでしょうか。一級建築士設計製図試験における必要な防火設備を再確認しましょう。
延焼のおそれのある部分
「延長のおそれのある部分」とは、以下の線から1階にあっては3m以下、2階以上にあっては5m以下の距離にある建築物の部分のことをいいます。
- 隣地境界線
- 道路境界線
- 同一敷地内の2以上の建築物相互の外壁間の中心線
(ただし、その2以上の建築物の延べ面積の合計が500m²以内の場合は同一の建築物とする)
隣地境界線、道路境界線
※Lは1階にあっては3m、2階以上で5mになる。
ちなみに防火上有効な公園、広場、河川等の空き地、水面がある場合は除かれているので、以下の図のようになります。
これは道路をまたいでも同様です。それが以下の図です。
さらに、ちょっと複雑なパターンだと、部分的に公園等が接している場合。それがこちらです。隣地境界線の影響範囲が円弧状になります。
同一敷地内の2以上の建築物相互の外壁間の中心線
同一敷地内の2以上の建築物の延べ面積が500m²以上の場合。
※Lは1階にあっては3m、2階以上で5mになる。
500m²以内の場合は、1の建築物とみなすため以下の図のように延焼ラインが引かれる。
防火区画
防火設備を設置する防火区画は大きく分けて以下の内容になります。
面積区画
面積区画は1,500㎡以内ごとに区画する必要があります。
試験においては、縮尺や用紙の都合上、1フロアで1,500㎡を超えることはありませんから、吹き抜けや階段部に特定防火設備を計画して竪穴区画と兼ねることが一般的です。
竪穴区画
竪穴区画は主に階段室、エレベーター、吹き抜け部の開口部に必要になります。
正確には、地階又は3階以上の階に居室がある場合の竪穴部になりますが、試験においては面積区画と兼ねる場合がほとんどですので階段室、エレベーター部はすべて特定防火設備で計画すると良いでしょうか。
また、吹き抜け部においては避難階の直上階、直下階のみに通じている吹き抜け部には緩和規定がありますが、3層以上になると緩和規定は適用されず区画が必要になります。
つまり1階が避難階の場合に、1,2階で吹き抜けを設ける場合は区画は不要になりますが、1階から3階以上まで吹き抜けを通じさせる場合や、2、3階で吹き抜けを通じさせる場合には区画する必要が生じます。
異種用途区画
異種用途区画は、特殊建築物の用途を付属する場合にその境界の開口部に必要になります。
厳密には、階数や規模により不要な場合もありますが、それを覚えるのは大変ですから、試験においてはすべて特定防火設備で区画してしまって良いと思います。不足している場合にはあしきりになりますが、過剰であっても減点になるかどうかの判定のようですので。
ただし、課題の発表の内容から予想されるものは適切に区画をしたほうが良いと思いますが、その程度の対応で十分に思います。
私は令和5年の図書館の試験において駐車場を屋内に計画しましたので特定防火設備で異種用途区画しました。
ちなみに、駐車場だと150㎡以上で区画が必要になります。機械式駐車場の場合は「地上階の駐車場部分の面積 x 駐車場台数」で計算することになります。
防火戸
外壁の開口部で延焼のおそれのある部分は、防火設備が必要になります。
.延焼のおそれのある部分 とは
隣地境界線、道路中心線又は方いつ敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は、一つの建築物とみなすので除外)相互の外壁間の中心線から1階は3m以下、2階以上で5m以下の範囲。
少し前までは○をたくさん開口部に書いていましたがグリッドごとにまとめた表記が公式解答例に出るようになりましたね。
屋内駐車場を計画する場合には中に第三者が入れないようにするためシャッター等を計画しますが、これも延焼ラインにかかっていれば防火設備が必要になります。令和5年の図書館の計画において下記漏れした方もいるのではないでしょうか。配本車用駐車場の位置によってはその出入り口が延焼ラインと掛かる可能性があったと思います。
また、作図においては延焼ラインの直行部の開口部を見落としがちですので注意しましょう。
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