令和6年の設計製図試験では、階数の指定がありませんでした。階数の指定がないのは令和4年の試験と同様で、一見自由度の高い試験に思えますが、題意より適切な階数というのは導かれるように決まります。令和4年では6階か7階の2択で、令和6年では階数の設定はほぼ1択と言える状況でした。そこで階数の決定に必要な手順を整理してみました。
また、階数の指定が無い問題が出ましたね。
そうですね。階数の指定がないのは2回目ですね。
なんだか、どんどん自由度が高くなってませんか?
そう感じるかもしれませんが、問題の条件をクリアする階数はほぼ決まっています。
何階建てで計画してもいい!というわけじゃないんですね。
自由度が高いというよりも、この階数での計画になる、それを条件から導いていく。といった感じです。一緒に整理してみましょう。
令和6年の問題より
出題時の文言
2.建築物
(1)階数及び構造種別は自由とする。ただし、地階は設けない。
階数設定の手順
手順を整理していくとわかりますが、階数が決まっていなくても基本的にはエスキスの手順としてはほとんど変わりません。
要求室の整理
まずは課題の要求室表より、必要な室数と面積、設置階を整理します。
室数に関しては、何室以上必要になるか。基準階に何室以上必要になるか想定します。
面積については、〇〇㎡、約〇〇㎡、〇〇㎡以上など。計画可能な幅を想定しましょう。
要求室表に室名が明記されれていない
近年では、下記のように
- その他事務所部門に必要な室等は、適切に計画する。
- 乳幼児連れに配慮した室等を、適切に設ける。
- 施設の運営管理に必要な室、その他必要な機能や什器、室等を、適切に
設ける。
といった形で室名を指定されずに要求されますので、課題に合わせて学習が必要です。
基準階あたりの室数、面積の内訳を計算する
要求室の整理が終わったら、次に基準階の構成を検討してみましょう。
要求室表を整理することで基準階に設ける要求室が決まります。
そうしたら、次に基準階を何層にするのか。
◯層に設定した場合に、基準階の要求室の室数はいくつになるか。
それにより基準階の合計面積がいくつになるかを計算します。
計算式は以下のになります。
{基準階合計面積+(吹き抜けや屋上部)}× 廊下係数 ≦ 建築可能範囲
これを満たすのは何層以下なのか判断します。
建築可能範囲は後述します。
廊下係数とは
「床面積の合計」から「要求室合計面積」を引くと、「その他の面積(階段、廊下、便所、倉庫等)」が残ります。これまでの課題では「その他の面積」が「床面積の合計」の3割程度になることが多く、「要求室合計面積」が7割程度になっていました。
つまり、廊下係数とは「要求室合計面積」に乗ずることで「床面積の合計」を想定する係数のことです。
ここでの係数は7割の逆数「10÷7≒1.43(約1.4)」となります。
ただし、課題によっては廊下係数の想定は変わります。実際、某資格学校では、大学の課題で想定する廊下係数を1.6で想定していました。
「床面積の合計(計画可能な)」÷「要求室合計面積」
により求められる廊下係数が1.4より小さければ、キツめの計画になっていますし、1.4よりおおきければ余裕のある計画となっているということでもあります。
建築可能範囲
建築可能範囲は建物に要求される設備と敷地の条件により決定します。
建築可能範囲は、建築できない範囲を求めることで残った範囲がその求めたい範囲となります。
一般的な手順としては以下のようになります。
①屋外施設の条件を確認する
屋上庭園や、駐車場、駐輪場等の設備をどこに設けるか、どれだけの面積が必要か。
②道路斜線による壁面の後退距離を確認する
建築物の最高高さを計算し、道路からの斜線勾配に鑑賞しないことを確認する。
③最低限必要なアキ寸法を確保する。
一般的には敷地境界線から建築物は最低でも2m離して計画します。
④その他課題の条件を加味する。
採光に配慮するなどの、文言があれば隣接する建築物から離す必要があります。課題により異なりますが、題意を汲み取りましょう。
これらにより、外部に必要な空間を確保した後に残った範囲が建築可能範囲となります。
答案用紙から階数が判断できた?
ちなみに、これから学習されるという方には余談ですが(これをアテにするのは学習の妨げになるので)、令和6年の問題の場合、答案用紙の作図スペースから6階建て以上にすると平面図の作図スペースに干渉するということがわかり、6階で計画するのは適切ではないだろうということが判断できました。
あくまで解答を導くためのテクニックの一つとして、知っておくとよいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。改めて整理してみるとやっていることは階数が指定されているときと殆ど変わらないと思います。階数が指定されていないため、基準階を〇〇層にした場合の基準会床面積がいくつになるか計算する一手間は増えますが、それを判断するための要求室表をの作成は毎度実施することです。
今回は以上になります。少しでも皆様の学習のお役に立てば嬉しいです。
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