毎年出題されている分野ではありませんが、力学の学習を終えていれば合わせて得点できるようにしておきたい「ひび割れの性状」。少なくとも基本的な2つのひび割れ性状を押さえておけば、初見の問題でも対応しやすいのではかと思います。
過去問を見たけど、いろんなパターンがあって覚えきれないんだけど!
基本的な2つのひび割れ性状を押さえておけば、問題に手応えが出てくると思います!
コンクリートのひび割れ
コンクリートのひび割れには、いくつかの原因がありそのひび割れ性状は多岐にわたります。ここでは、過去問によく出る力学とからめたひび割れ性状をピックアップしたいと思います。主なひび割れ性状はこの2つです。
- 曲げひび割れ
- せん断ひび割れ
ちなみにその他にも
- 付着ひび割れ
- 沈みひび割れ
- 水和熱ひび割れ
- 収縮ひび割れ
- 梁主筋の折れ曲げ定着部のひび割れ
などがあります。
曲げひび割れ
柱、梁に曲げ応力が作用し、引張側のコンクリートに材軸に対して直角方向にひび割れが生じる現象。
モーメント図と合わせて確認していきましょう!
力学のモーメント図を出題される躯体に落とし込みます。
梁の曲げひび割れ
M図の通り、引張側である梁の端部の上側と中央部の下側に直線上にひび割れが生じます。
柱の曲げひび割れ
M図の通り、引張側である柱の柱頭部と柱脚部に直線上のひび割れが生じます。
【応用】その他の曲げによるひび割れ性状(過去問:平成29年抜粋)
過去に、曲げのひび割れ性状に関する問題として柱梁接合部のひび割れ、独立基礎フーチングの接地圧によるひび割れが出題されています。
問題.「躯体に発生したコンクリートのひび割れの状況を示す図」と「その原因の説明」として最も不適当なものは、次のうちどれか、というもの。
どうでしょうか。力の方向が図示されていますのでモーメント図をイメージできれば、その曲げの引張側にひび割れが生じるわけです。この2つの枝の組み合わせは正しいでしょうか?
早速、両方の図にモーメント図を落とし込んでみましょう!
こんな感じになります。
柱梁接合部はイメージしやすかったと思います。独立基礎のフーチングは、幅広の片持ち梁に負荷がかかっているイメージをができればそれを上下反転させると図のようになります。
したがって解答は、1は正しい枝。2は誤りの枝となります。
せん断ひび割れ
せん断力の大きい箇所で曲げモーメントによる引張側に材軸に対して45°の方向にひび割れが入る。
こんな感じです。
そして、柱、梁の場合は曲げモーメント図とほぼ直角方向にひび割れが生じます。実際に図で見るとわかりやすいです。
鉛直荷重によるせん断ひび割れ
水平荷重によるせん断ひび割れ
というふうになります。
【参考】その他の箇所で生じるせん断ひび割れ(過去問:令和2年抜粋)
過去には、柱梁接合部でのせん断ひび割れについて出題されています。前述の応用になりますが、考え方は同じですので確認しておきましょう。
問題.「躯体に発生したコンクリートのひび割れの状況を示す図」と「その説明」として、最も不適当なものは、次のうちどれか。
どうでしょうか。見えないせん断力をイメージできるかどうかがこの問題のポイントなのですが、一度確認しておくと、記憶に残りやすいと思います。
順番に見ていきましょう!
まずは3の枝から。
矢印の向きの引張力が生じると、上端筋の周囲のコンクリートは下図のように右に引き寄せられる力を受けます。それによりせん断力によるひび割れの性状が発生します。
図の通り、3は正しい枝です。
4は図を用いてひび割れが生じるまでの過程を見て確認してみましょう。
せん断の変形に伴い斜め方向に引張力が生じ、ひび割れが図のように発生します。
したがって、4の枝は正しい枝となります。
【参考】地震によるひび割れ
地震が発生した場合に生じる地震力は、揺り戻しが生じますので外力の向きは一方向だけではありません。
ですので実際の建物に生じるひび割れ性状はせん断力により「X」のように生じます。
以上になります。いかがでしたでしょうか。ひび割れの性状を覚えるというよりは、曲げやせん断の応力が実際の躯体にどのように生じるかということが落とし込めれば、破壊性状を想定できるということになります。今回も少しでもお役に立てれば嬉しいです。
コメント