一級建築士においては図から工程を読み取る出題は少ないですが、実務的な問題で一度理解しておかないと引っかかりやすい種類のカテゴリーです。難しくはありませんから、その周辺の知識と合わせて一緒に見ていきましょう!
ネットワーク工程表を読み取る問題は簡単そうに見えるから間違えると気持ちが下がりますよね。
そうですよね。ただ、きちっと理解していないと、引っかかりやすい問題なので確認してみましょう!
工程表の種類
一級建築士に出題される工程表には大きく分けて2つの工程表があります。
- 横線式工程表(バーチャート)
- ネットワーク式工程表
横線式工程表(バーチャート)
横軸に工期、縦軸に工事種別を列記した工程表。各作業が見やすいという利点があるが、複雑な工程においては作業の相互関係がわかりづらく、順序が掴みにくいというデメリットがある。
ネットワーク式工程表
全体工事を単位作業に分解し、施工順序に従って矢印と丸で網状に表す工程表。各作業の相互関係が明確になり、関連工事が複数になる場合に工程調整がしやすい。デメリットとして、出来高がわかりづらいという点がある。
工程表作成時の注意点
- 「気候、風土等の影響」、「計画書の作成、承認」、「試験の時期」、「仮設物の設置期間」等を考慮し、余裕をもたせる。
- 外部工事においては、風雨や気候による労働力の季節的変動を見込む。
- 仕上工事においては、関連工事が多くなるため大幅な工期短縮は見込めない。
ネットワーク工程表の見方
見方については例があったほうがわかりやすいので、以下の図を参考に説明します。
基本的な考え方はこちらの図になります。
この図から読み取れるのは…
作業Aの完了には3日かかるということ
作業Bについては作業Aの完了後になるということ
作業Bの完了には1日かかるということ
作業A、Bの完了には合算して4日かかるということ
です。
これはわかりやすいですね。次は関係工事が発生した場合です。図で示します。
上図の③に至るまでの所要日数は何日でしょうか。
0 → 1 に要するのは 2日
0 → 2 に要するのは 3日 です。
②から作業Cに移るためには作業Aと作業Bが完了している必要があります。
作業Aは2日ですが、作業Bは3日かかるため、作業Cに移る前の②の段階で3日必要になります。
② → ③ に要するのは 1日
最後は合計して3日と1日で、この工程表の所要日数は4日ということになります。
過去問(一級施工管理技師)
基本的な考え方は、先述した内容になりますが、覚えておいた方がいい用語と応用を考えてみましょう。一級施工管理技士の問題にちょうどよいのがありましたので一緒に見ていきましょう。
【平成28年-一級施工管理】
それぞれのネットワーク工程表に関する記述として下記の正誤を判断せよ。
- 作業⑥→⑨の最遅終了日は25日である。
- 作業⑦→⑧の最早開始日は18日である。
- 作業⑤→⑦のフリーフロートは2日である。
- 作業⑥→⑨のトータルフロートは1日である。
過去問ー解説
まず、この問題を利用して「クリティカルパス」について説明します。
クリティカルパスとは…
開始点から終了点までのすべての経路で最も時間が長い経路のことです。過去問の選択肢においても全く余裕(フロート)のない経路(パス)、として出題されています。
先程の図に補足します。
この工程のクリティカルパスは32日になります。所要日数も32日ですね。
足していった作業日数を丸く囲い、合算した日数を赤字で補足しました。
分岐点の考え方ですが…
例えば、⑦から⑧に移るには、⑤と⑥が完了している必要があります。
クリティカルパスは最も時間が長い経路ですから…
③ → ⑥ → ⑦ に要する日数は8日
③ → ⑤ → ⑦ に要する日数は7日
この2ルートの多い日数を合算します。③時点で10日。8日を足して⑦は18日となるわけです。
その他の分岐においても同様のルート選択し、計算しくことでクリティカルパスを求められます。
選択肢1ー解説
1.作業⑥→⑨の最遅終了日は25日である。 → 正しい枝です。
最遅終了日とは、工程を守るために各作業を完了しなければならない日程です。文字通り最も遅い、工期ギリギリの作業完了日です。
ここではクリティカルパスと同様の考え方で求められるので、⑨のクリティカルパスは25日ですから正しい記述となります。
選択肢2ー解説
2.作業⑦→⑧の最早開始日は18日である。 → 正しい枝です。
最早開始日とは、文字通りその作業ができる最も早い日程です。
⑤ → ⑦ このルートでは17日で到達できますが
⑥ → ⑦ このルートでは18日要します。
⑦から⑧の作業に移るには⑤と⑥の作業が完了している必要がありますから、時間の要する18日ということになります。
選択肢3−解説
3.作業⑤→⑦のフリーフロートは2日である。 → 誤りです。
フリーフロートとは…
後続作業との間に生じる余裕時間のこと
選択肢2でも解説しましたが、
⑤ → ⑦ このルートでは17日で到達できますが
⑥ → ⑦ このルートでは18日での到達となります。
ここでは⑥からのルートが後続作業となり、⑤のルートでの到達時間から1日の余裕が生じていることがわかります。
選択肢4−解説
4.作業⑥→⑨のトータルフロートは1日である。 → 正しい枝です。
トータルフロートとは…
クリティカルパスからみて、その作業の持つ最大の余裕のこと。
最遅終了時刻(LFT)ー最早終了時刻(EFT)で求められる。
最早終了時刻とは…
作業を終了しうる、最も早い時刻のこと。
新しい用語が出てきましたので図で補足します。
青字が最早終了時刻、緑の日数がトータルフロートです。最早終了時刻については、関係工事を考慮せず、そこに至る最短のルートを使用した場合の日数になります。あとは最遅終了時刻ー最早終了時刻により求められます。
以上です。
選択肢4については、すこし施工管理技士よりの問題になりますので、1〜3で十分かな、と思います。お役に立てば嬉しいです。
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